凶悪アニメ『あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。』

凶悪なアニメ『あの花』の感想です(※全ネタバレ)


主人公じんたん引きこもり。小学校時代は仲良しグループのリーダーだったが、高校に進学した現在は不登校。このアニメは一話から「凶悪!」と評判だったんだけど、自分には「小学校の頃は凄かった...あんな輝いてた...」って思うことが無いので「凶悪か?」ってわからずいたんですけど、2,3話と見てすぐさま訂正。このアニメ、凶悪です。


ゆきあつ。女装癖。エリート校に通い、社会的にも全てじんたんに勝ってるはずなのに負けた気持ちは無くならない。


鳴子。幼い頃は引っ込み思案のオタクだったが、高校では派手なギャル集団と交流している。本来の自分を偽って。


めんま。いいこです。周りの友達にコンプレックスを抱かせるほどいい子。他人をいたわります。このめんま、物語中「なんでいつも他人のことばっか気遣うんだよ!いつも他人他人...自分のこともいたわれよ!!」と激怒されます。他人を気遣うこと、思いやることはいいことです。いいことなのに、そのことで思いやった相手を傷つけてしまう。凶悪な事です。誰も悪くはない。でも皆傷つく。そんな残酷なことを描いてしまうこの物語は凶悪。
 ゆきあつの紹介で「女装癖」と書いたんですが、彼の女装も笑えないんですね。女装癖がバレる前はファンの間で盛り上がってましたが、いざそのエピソードを見ると笑えない。登場人物たちも彼の女装姿を見て立ちすくんでしまう。引いてはいない。それは衣装が、めんまの服だから。他の5人は異性装はしてないが、それぞれめんまという過去にとらわれている。全員めんまの格好をしてしまうゆきあつの気持ちがわかるんです。だから何も言えなくなる。
 じんたんはめんまの為に引きこもることをやめバイトを入れまくる無茶をし頑張るんですが、じんたんのことが好きな鳴子は彼が過労を重ねていく姿に胸を痛める。彼女は「無茶をしてほしくない」と泣きながら訴える。「でもめんまの為に」とじんたんはそれを拒む。これも凶悪。2人とも誰かの為を純粋に思っているのに傷つけ合っている。そして物語終盤「めんまの願いを叶えよう!」と一致団結したはずなのに、じんたんのモチベーションは下がってくる。めんまに成仏してほしくない。一緒にいたい。

 遅くなりましたが、このアニメは小学校時代仲良しグループだったが、そのうちの1人・めんまの突然の死によってバラバラになった6人組の話です。10年後、じんたんの前に、彼にしか見えない幽霊・めんまが現れる。めんまは願い事があって成仏できない。6人の心に傷をつくっためんまの再登場をキッカケに、また6人が集まり出す。それぞれ傷を抱えたまま。『あの花』は、傷についたカサブタをはがすような話。カサブタをはいだら傷はまだ治っていなかった、膿んでたという話。彼ら彼女らの傷は時すらも癒してなかった。どーすりゃいいんだよ!と笑。そんな彼らは最後、隠れん坊をする。「もういいかい」「まぁだだよ」 友達と、友達を探す。 「見いつけた」「.....見つかっちゃった」彼らは笑顔になって、涙をこぼす。不器用で、他人を思いやりながら、身勝手だった彼らはその時....10年前のように、きっと、"1つに"なった。「俺たちは超平和バスターズだ!」


友達の存在が友達を救う。
友達との交流が、助け合いが傷を癒す。


「友達っていいもんだな!」と思いました。(ベタ笑)

 ネタバレとはいえ核心までは言えないので是非見てください。


 印象に残ったシーン。「俺らは全員自分勝手な理由でめんまの願いを叶えようとした。そんな自己中な俺らがめんまの願いを叶えられるわけなかった!」と号泣する5人。実はその時にはめんまの願いは完了していて、実際は叶えられていたから的は得てなかったんだけど、この気づきがとても良いと思った。彼らが気づいて反省して全員で涙まで流したことが。「めんまの願いを叶える」って目的に直接的な関与は無くとも、その涙はきっと糧になる。