青野賢一『迷宮行き』

 
 青野賢一は語る。『人間失格』の主人公は創造者に模範され命を吹きこまれた、自ら死を選べない神話的な者であると。サルバドール・ダリアイデンティティ確立の為に芸術活動を行っていたので舞台がアメリカに移るとそのなりふりまでもアメリカ的に変容させた、その結果シュールレアリズム界から除名されたのではないかと。自衛の武器である帽子は、日本では経済成長下で闘う社会人の頭上から不安を抱く若者の頭頂へと居場所を変えた。時が変化を刻みながらも青野賢一は今日も語る。めまぐるしく広い知識と尊敬の念を持ち合わせながら、全であり一である芸術たちをウロボロス的な論理で繋げ、さながら錬金術師のように文を創り上げてゆく。それは本人が熱情を注ぐ不思議の国のアリスのような、迷宮的な世界。いやぁこういうブログが書きたいものです。

今、世の中には沢山の音楽が溢れていて、昔に比べたら聴く手段も機会も圧倒的に豊富である。では、そんな中、本当に素敵な音楽と出会う確率はというと、分母が大きいだけに、逆に難しいのかもしれない。このことは、音楽に限ったことではなく、映画や本や、ファッションやデザインといったことにだって、同様にあてはまるだろう。わたしたちがやるべきは、本当にいいと思えるものやことを、真剣に伝えていくこと。なぜいいか、どういいかをひとりでも多くのひとに伝えるには、表層的な言葉だけじゃ、だめなんだ。

本書見本。ここで読める。 http://bccks.jp/viewer/34276/1/A/VIEW
著者ブログ。 小径逍遥、再び。(青野賢一) | SHOP/BRAND BLOG(ショップ/ブランドブログ) | HOUYHNHNM(フイナム)