波田浩之『広告の基本』伊東裕貴『よくわかる広告業界』を読んで、広告業界の印象

この1冊ですべてわかる 広告の基本

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よくわかる広告業界 (最新業界の常識)

よくわかる広告業界 (最新業界の常識)

 実は電通という企業は国内にとどまらず業績世界1の企業である。しかし、それを電通は喧伝しない。何故だろうか。それは日本以外の巨大広告企業はメガ・エージェンシー、複数企業をグループ化する思考だから。「広告会社」ランキングでは電通は1位だが、「広告会社グループランキング」では電通は5位。1位のオムニコム・グループの収益は5〜10位の合計よりも大きい。5位から10位にかけては電通博報堂DYADKが入る。国際社会全体の規格では国内でガリバーと呼ばれる電通は5位に過ぎない。(外資と異なり海外進出が滞ってないので、国内需要でそれだけ稼いでるのは凄いですが。しかし国内市場も他産業と同じく限界を見せ始めている)

 日本の広告業界ガラパゴス化してる印象を受ける。グローバル企業化してる外資の広告会社はグループ化が基調になっており、利益制度がクリエイティブ重視のフィー型。クライアントも「1社1業種」制。反して日本の広告企業は電通が単体で利益世界1に輝いているようにグループ化は根づいていない。依頼主依存体質のコミッション型だし、TOYOTAも日産のクライアントもする(つまり、「1社1業種」ではない。広告主のマネジメントも行う広告企業で競合企業とも仕事をしていては、機密情報を流されるかもしれないという矛盾がある)。意外なのは、「広告代理店で最も偉いのは営業である」、という主張。これは広告代理店の商売形態が「広告主の契約ありき」だからでしょう。営業が契約をとらないと広告創作も始まらない。
 大手企業の特色も面白い。「営業の電通」と言われる契約重視の新聞部門出身でない社長は今までで1人だと言う。これは新聞を読む層が高所得者だから、自ずとそのようなクライアントの契約がとれる新聞部門出身が偉いということになる。「クリエイティビティの博報堂」はコピーライター出身の社長が今までで3人。
 媒体広告費で50%を占めていた4媒体ーTV・新聞・雑誌・ラジオーの落ち込みも注目せざるを得ない。権威を誇っていた雑誌・ラジオを超えたのはインターネットだ。広告も請け負うIT企業も増えており、既存広告会社との関係も見ていきたい。
 そんな中、近年ではクリエイティブエージェンシーの活躍も目立つ。佐藤可士和のサムライなどのクリエイター独立事務所。単なる下請けではなく、クリエイティブ企画に対するフィーを収入源にする企業形態。実はsoftbank白戸家CM・缶コーヒーBOSSは独立事務所「シンガタ」の作品。